自民党総裁選が近づいてきている。新聞の一面には、自民党内の派閥争いを形容して「混迷」の文字が踊る。また、新型コロナウイルスに関しても、感染者数自体は減少しつつあるが、変異株の影響で1年先も読めない状況であることには変わりない。誰もが現状を悲観し、誰かを責めたい気分にもなるだろう。
最近書店で『楽観論』という新書を見かけた。著者は、タレントや小説家としてもよくメディアで見かける社会学者の古市憲寿氏だ。週刊誌の連載をまとめたもので、全体を通したテーマがあるわけではない。しかし、この危機と変化の時代に、「楽観論」という切り口でまとめたのが斬新だったのだろう。
古市氏は、楽観論とは、「あきらめながらも、腹をくくる。」「受け入れながらも、視点をずらす。」ことだと述べる。根拠が薄弱な悲観論に身を任せて現実を受け入れてしまうのではなく、なんとかなると思っていた方が実際に良い現実を作り出すのではないかというのだ。確かに、その方が気が楽でもある。
悲観論は、現実をより大きなもののように見せ、人々に現実を受け入れさせる。しかし、人々は現実を受け入れると同時に責任を手放してしまう。責任を手放すということは、悲観的な現実の原因を他者に押し付けるということにもなりかねない。大学に通う若者としては、現実を受け入れつつも「視点をずらし」て捉え、問題の解決策を常に探っていきたいところである。