採用担当者に聞くコロナ禍の就活① 「自分のこれからと会社のこれからが一致することを願って」

コロナ禍における就活生の心構え

 就職活動において答えはない。では、我々学生にできる対策はあるのだろうか。「まずは企業理念に共感できることですね」と坂田さんは明るく答えた。

 「TOTOは、特に企業理念への理解を見ます。この傾向はTOTOだけではなく、多くの会社で見られると思います。」企業理念という会社の軸に共感し、自分の個性を発揮して働きたいと思える会社を探すこと。これが、我々学生が行うべき対策と言えよう。また、企業の軸を知るために、企業説明会やOBOG訪問を活用するのは有効だ。

就活生のジレンマ

 ただし、「就職活動だけを頑張ってほしくない」と坂田さんは語る。

 「自分がいろいろな経験をして、その経験をお話ししていただきたいなと思っている。全国大会に出ましたとかじゃなくて良いので、自分が経験した、自分の実験の話でも趣味の話でも良いので、社会人と会話が成り立つような、自分の経験をたくさん持って欲しい。学生時代に何をしていましたかと聞いて『就職活動です。』では本末転倒だと思うんです」と坂田さんは熱く主張する。

 自分を企業に紹介する際に、何に興味がある人物なのか、その興味に対してどうアプローチしたのか。これらを企業に理解してもらえるように言語化する能力と、言語化する対象としての課外活動や研究、趣味活動が重要になるだろう。

 しかし、現実には就活の情報が溢れているため、自分ではないところに自分を表現してしまう学生が多く、「とてももったいない」と坂田さんはいう。

 入社後のミスマッチを防ぐためにも「礼儀をわきまえつつ、社会人にも伝わる自分のオリジナルが出せるように、学生生活を選考の中で表現してほしい。自分のこれからと会社のこれからが一致するような会社にってほしいなと思います」と終始笑顔で語ってくれた。

制約のある学生生活、知恵で充実させよう

 新型コロナによって、求人倍率も下がり就活に不安を覚える塾生も多いことだろう。確かに就活における企業側のニーズは変わった。単に優秀な学生を多く採用する従来の採用方針から、社会の変化に耐えうる柔軟な会社経営のために、多様な価値観をもった学生を企業側は求める。もちろん、優秀な学生を求める従来の採用方針をとっている企業があることも留意すべきである。業界や職種によって、最低限必要な能力やテンプレート的な回答を欲する企業も存在する。

 しかし、社会全体として多様性を認める傾向にあり、目まぐるしく変化し続ける社会において、多様な価値観が社内に存在することを望む企業は今後ますます増えていくだろう。この流れを加速させる1つの要因に、新型コロナはなったのかもしれない。

 今、我々学生がすべきことは、自分の興味や情熱をぶつけることのできる活動を見つけ、没頭することである。それは、何も社会的に意義あるものでなくてよい。自分を表現できる活動。その活動に没頭し、上手く大人に説明できるようになれば必ず「ご縁」はめぐってくるだろう。新型コロナで活動が制限されてしまう世の中だが、そんな世の中だからこそ、塾生は自身の情熱を形にするための知恵を編み出し、充実した学生生活にしてもらいたい。